★ 未来を変える仕事さがし ★

名著「ワークシフト」で未来へ挑戦する⑦「副業という形で新しい分野に乗り出す」

★あなたの未来 ・ 2025年を生きる
この記事は約13分で読めます。
《 運営者から皆さんへ 》
このワークシフトに関する各記事は、長いです。(笑)
文字数で8000文字くらいあります。
となると、400字詰め原稿用紙で、20枚分です。
それを考慮して、作成したのがPDF形式の紙しばいです。
要点だけ、短時間でサクッと理解したい方は、
下のPDF資料をダウンロードして読まれる方が良いと思います。
以上、運営者からのお知らせでした。(笑)

第4部 働き方を<シフト>する

【 第8章 第一のシフト 後半 】

高度な専門技能を身につける方法

私たちは、産業革命前の職人の技能習得プロセスを見習うべき面があるのかもしれない。
高度な専門技能を武器に働ければ、仕事と遊びの境界線をあいまいにするチャンスも開ける。

ただしそれだけでは十分でない。

未来の世界では、技能を高めるために職人のように考えることに加えて、
イノベーションを実践し、創造性を発揮するために、子供のように遊ぶことも必要だ。

専門技能を磨き上げることを目的にした中世の職人のシステムは、
私たちが働き方の未来を考える上で参考になる。

学ぶべき点は三つある。

第一は、リチャードフロリダの指摘とも重なるが、
高度な専門知識と技能を身につけるうえで「場所」がいっそう重要になる可能性が高いという点だ。

中世の職人と同じように、私たちも学ぶべき点のある人たちのそばに身を置く必要性が高まるだろう。
どこで生活し、どういうコミュニティの一員になるかが、これまで以上に大きな意味を持つようになる。

第二はテクノロジーが進化して、学習に要する時間が短くなったとはいえ、
高度な専門技能を身につけるためには、やはりかなりの時間をつぎ込む必要があるという点だ。

もしかすると、仕事に費やす時間の半分を技能習得に充てないと十分でないかもしれない。
別の章でも触れたように、きわめて高度な専門技能を習得するためには、
一万時間以上の訓練が必要だという説もある。

第三は、同様の技能を持つほかの人たちから自分を差別化する必要があるという点だ。
本章の後半で論じるように、単なるナルシシズムに陥ることを避けつつ、
自分をうまく宣伝することの重要性が高まる。

子供のように遊ぶ

中世の職人は、師匠を模倣するために訓練を続け、20年くらいの期間をかけて自分らしさを確立していく。
これは模倣であって、独創的なイノベーションではない。
職人たちが徹底した訓練を積む姿勢から学ぶべき点は大きいが、
私たちにとっては、イノベーションと創造性の大切さも見落とせない。

これまで企業は、合理性と一貫性を確保するために「管理」の要素を重んじてきた。
遊びと喜びの要素が完全に排除されていたとまでは言わないが、これらはあくまでも脇役でしかなかった。
しかし未来の世界では、単なる模倣にとどまらない高度な専門技能を身につけたければ、
遊びと創造性がこれまで以上に重要になる。

以前から広告クリエイターや作家、デザイナー、イベントプランナー、社会理論家などの
クリエイティブクラスの人たちは、自分の創造性に火をつけるために空想と想像を活用してきた。

スポーツ選手やコンサルタント、研究者、数学者、セラピストなどの職種は、
遊ばなければ高度な専門技能を磨けない。
自分のやっていることに胸躍らせ、学習と訓練につきものの苦労を楽しみ、
手ごわい課題に挑むことにやりがいを感じてはじめて、私たちは本当に高度な専門技能を習得できる。

この考え方は、カール・マルクスもよく理解していた。

マルクスに言わせれば、産業革命を機に普及した分業システムのもと、
労働者の利害がコミュニティの利害から切り離され、労働者は受動者的な生産と消費のプロセスではなく
積極的な自己実現のプロセスであるべきだと、強く信じていた。

哲学者のジャンポール・サルトルも、仕事とは意義を見出すプロセスであると位置づけた。

とりわけ、本当の自分らしさと個性を獲得することが重要だと考えていた。
サルトルによれば、私たちの職業生活で重要なのは、高度な専門技能に習熟するための深い経験だという。

自分らしさと個性とはお手軽に身につくものではなく、努力して学ばなくてはならないからだ。
人間は自分の行動の総和にほかならず、意義ある人生を送れるかどうかは、
意義ある仕事ができるかどうかに大きく左右されると、サルトルは考えていた。

マルクスとサルトルの思想に共通するのは、楽しさとやりがいを見出せる要素と仕事を切り離せば、
機械的な作業を単調に繰り返すだけになり、その人の本質をなす要素の一つが薄まって、
自分らしさが失われると考えたことである。

移動と脱皮で専門分野を広げる

専門技能に習熟することについて回る落とし穴は、狭い専門分野に特化するあまり、
広い視野を失いかねないことだ。
しかし、未来の世界で大きな価値を生み出すためには、この落とし穴にはまらず、
複数の分野の高度な専門知識と技能を組み合わせることが欠かせない。

それを成し遂げる方法は大きく分けて二つある。

一つは、特定の専門分野の枠を超えた幅広い人的ネットワークを築き、
その中で複数の専門技能を組み合わせるという方法。
大勢の多様な人たちと接点を持つことにより、さまざまなアイデアや発想に触れるのである。

もう一つは、自分自身で複数の専門技能を身につけるという方法。
現在の専門分野の隣接分野に移動したり、まったく新しい分野に脱皮したりすれば、
守備範囲が狭くなりすぎる危険性を回避できる。
専門分野で高度な知識や技能を習得した後で、それを土台に隣接分野の技能や知識を磨いたり、
忘れていた技能や知識を再び見出したりすればいい。

キャリアの脱皮を成功させるコツ

第一は、新しいチャンスが目の前に現れたとき、未知の世界にいきなり飛び込むのではなく、
新しい世界を理解するために実験をすること。

第二は、自分と違うタイプの大勢の人たちと接点を持ち、
多様性のある人的ネットワーク(ビッグアイデア・クラウド)を築くこと。

潤沢な情報や視点が手に入るだけでなく、ほかの専門分野で活動している人の生き方を見ることにより、
自分がその分野に脱皮できるかどうかを判断するヒントを得られる。

新しい専門分野に脱皮するときは、それまでと異なる人的ネットワークが必要となる。

尊敬できる先輩がいれば、その人を観察し、模倣することにより、新しい専門技能を磨ける。
新しい仲間は、新しい世界で身につけるべき価値観や規範、態度、期待のお手本になる。

やがて、この人的ネットワークのメンバーが関心を共有しながら専門知識や技能を学びあうようになる。
そのようなグループは、専門的には「コミュニティ・オブ・プラクティス」(学びあいの共同体)と呼ばれる。

第三は、はじめのうちは本業をやめず、副業という形で新しい分野に乗り出すこと。
既存の仕事をフルタイムで続けて収入を確保しつつ、新しい分野の経験を積み、
専門技能や知識を磨き、信用を築き、同時に新分野での自分の適性を試すのだ。

キャリアの脱皮を遂げようと思えば、ある程度の時間が必要だ。イバラの言葉を借りれば、

「前に大きく跳躍するためには、跳ぶ前に一歩下がらなくてはならない」

脱皮を成功させるためには、現在のキャリアの選択についてじっくり考えることが重要なのだろう。

せめて短い時間でも頭を冷やして考えれば、固定観念から解き放たれて、
未来の可能性を新鮮な目で検討できる。

セルフマーケティングの時代

未来の世界では、グローバル化が急速に進み、
インターネットを通じて世界中の人々が日々新しい知識を仕入れるようになる。
そういう時代に、大勢の人たちの中で自分を際立たせるためには、なにが必要なのか。

私がこの問いの答えに気づいたのは、ロンドンビジネススクールの同僚だった
故スマントラ・ゴシャールとの共同研究で、成功している企業について詳しく調べたときだった。

やっていることの多くは、成功企業も同業のほかの企業と変わりなかった。
おおむね、業界のベストプラクティス(お手本となる作法)を取り入れているに過ぎない。

しかし成功を収めている企業には、それだけではなく、独特な要素、類稀な要素が必ずあった。
私たちはそういう要素を「シグニチャー(署名)」と呼んだ。

自分の署名が他人に真似できないように、ライバルには真似できない特徴的な要素を備えていたのだ。
それは、幹部たちが会議で協力しあう姿勢だったり、人材の採用選考の方法だったり、
企業の組織構造や意思決定プロセスだったりする。

いずれにせよ、それはその会社特有のものであり、それが会社に価値を生み出していた。
成功企業とその他大勢の企業の差はここにあった。

多くのライバルがひしめき合う市場では、企業やブランドだけでなく、
個人にとっても自分の「シグニチャー」を明確に打ち出すことが重要になる。

世界中の人々が能力を磨くチャンスを手にする結果、
労働市場の競争が激しくなるので、自分の能力を証明する必要性が高まるのだ。

では、どうすれば自分の能力を証明できるのか。

未来の世界では、大企業にフルタイムの社員として勤務する固定的な労働形態で働く人の割合が低下し、
専門知識を武器にプロジェクト単位で働く流動的なフリーエージェント型の働き方をする人が増えるだろう。

そういう働き方を選べば大きな充実感を味わえるかもしれないが、
問題は、仕事の世界で「見えない存在」になりがちなことだ。

長期間にわたり同じプロジェクトに携わるケースが少なく、
仕事上で関わりあう顔ぶれが頻繁に入れ替わり、
一人ひとりが自分の専門技能をたえず変化させていくので、どうしてもそうなりやすい。

一つの企業に勤務してフルタイムで働く人たちの状況も大きく変わる。
社内の組織構造が昔ほどピラミッド型でなくなり、組織階層が簡素になる結果、役職や肩書きの数が減る。

温室効果ガス排出量を減らすために、オフィスに出勤せずに在宅勤務をする人も増える。
出勤するにしても電車通勤が当たり前になり、立派な社用車を見せびらかす機会は少なくなるだろう。

しかも、上司が頻繁に入れ替わり、社員だけでなく社外の人と一緒に仕事をするケースが増える。
要するに、あなたがどういう人間かを知っていた同僚や上司との結びつきが失われていくのだ。

このように、これまでより柔軟な形態で、人との緩やかな結びつきの中で、
複数の会社を相手に働くケースが増えるのにともない、他人に自分を印象付ける必要性が高まる。
大勢の中で自分の存在を際立たせることが重要になるのだ。

そのためにとりわけ有効な方法が三つある。

一つ目は、たとえて言えば、自分の仕事に自分の刻印を押すなり、署名を書き込むなりすること。
つまり、あなたの手がけた仕事が誰の目にもあなたの仕事だとわかるように、
明確な特徴をもたせるのである。
自分の評判を保つために、積極的に評判をマネジメントすることも不可欠だ。

二つ目は、弁護士や医師のような専門職にならって、
ギルド(同業者組合)やそれに類する組織をつくること。
オンライン上にそうした仕組みをつくる場合は「バーチャル・ギルド」と読んでもいいだろう。

三つ目は、活力を失わず、精力的に仕事に打ち込み続けるために、
さまざまな要素を取り込んでキャリアのモザイクを描き、
いわば教会のカリヨンツリー(組み鐘のタワー)型のキャリアを実践すること。

信憑性のある能力証明

格付けは、働き手が自分の仕事の質を多くの人に知ってもらう強力な手段になりうる。
この種の仕組みを機能させるには、ほかの人との比較が可能なこと、
そして、運営の独立性が保たれていることが欠かせない。

そのニーズを満たすために、独立した格付けサービスの役割が大きくなるだろう。
いくつかの分野では、そういう趣旨の格付け制度がすでに存在する。

自動車や家電製品に関しては、消費者団体が製品の評価を行っている。
今後は、同じ分野の専門技能や能力を持つ人たちが集まって、
評価と格付けの仕組みを築くようになるかもしれない。

これは中世の職人の世界でギルドが担っていた役割でもある。
組織に属さないで働く人が増えれば、そういうギルド的組織の重要性が高まるだろう。

ギルドの一員になる。

評判の確立と管理は、同種の専門技能や能力を持つ人たちが形成する
コミュニティを通じて行われるケースが増えるだろう。

特にインターネットを活用して、専門技能の持ち主が顧客を探したり、
同業者と組んで大規模なプロジェクトに参加したり、情報や知識を共有しあったり、
評判を確立、拡散させたりするのが一般的になるだろう。

これまで多くの企業が採用してきた中央集権型・ピラミッド型の管理とは対極的な世界といって良い。

未来のギルドは、働き手がいくつもの企業の仕事を経験しながらキャリアを築く手助けをし、
これまで企業の人事部が果たしてきた役割を担うようになる。

それにともない、ギルドはメンバーの能力証明、職務内容の統一基準づくり、
給与・報酬の水準設定を行う実力を磨いていくだろう。

医師や弁護士などと同じように、ソフトウェアプログラマーや
プロジェクトマネージャーなどの職種では、すでに、企業の垣根を越えた能力証明制度が生まれ始めている。

カリヨンツリー型のキャリアを築く

私たちの職業人生は次第に、伝統的なキャリアの道筋と異なるカーブを描くようになる。

それは「ダウンシフティング」(収入よりゆとりを大切にする生き方への転換)を選ぶ人たちの
「釣鐘型」のキャリアのカーブとも違う。

今後主流になるのは、いくつもの小さな釣鐘が連なって職業人生を形づくる
「カリヨンツリー型」のキャリアだ。

精力的に仕事に打ち込む期間と、長期休業して学業やボランティア活動に専念したり、
仕事のペースを落として私生活を優先させたりする期間を交互に経験し、
ジグザグ模様を描きながら仕事のエネルギーや技能を高めていくのである。

1980~90年代まで、フルタイムで働くとは、次のような生涯を意味した。
—-
20歳前後でどこかの企業に入社し、一生懸命働いて30代前半に中間管理職に昇進。
その後は、順調に進めば社内で権力と給料の額が上昇し、50歳代でエネルギーと収入が最高潮に達する。
そして60歳代前半のある日に退職し、その瞬間に全てが終わる。

これが伝統的なカーブのキャリアだった。

未来の世界では、こうした道を歩んで生涯を終えることはできなくなる。
では、どういうキャリアの道筋が主流になるのか。

一つの可能性は、前述のダウンシフティングの人生だ。
この生き方を選択すると、キャリアは釣鐘型のカーブを描く。
20~50歳代にかけて、エネルギーと技能、働き手としての価値が高まっていくが、
ある段階からキャリアのカーブが下降線に転じ、
70歳代か80歳代のいずれかの段階でついに働くことをやめる。

もう一つのキャリアの可能性は、アメリカのキャリア専門家タミーエリクソンが言う、
「カリヨンツリー型」のカーブを描くキャリアだ。

カリヨンツリー型のキャリアをたどる場合は、20歳代前半まで大学などで学び、
その後、企業に就職し、専門技能を高めていく。
そして数年後、たとえば30歳の時に一年間仕事を休んで、長期の旅行にでかけたり、
ボランティア活動に携わったりする。
31歳で仕事に復帰すると、今度はいくつもの企業が関わるプロジェクトに携わる。

やがて40歳代になって、また仕事を離れて、一年間学校で勉強する。
既存の専門分野を土台に、別の専門分野への脱皮を遂げるためだ。

40歳代と50歳代前半にかけて精力的に仕事に打ち込んで、新しい専門分野で技能を高めていく。
50歳代半ば、再び一年間仕事を休んで、長期旅行とボランティア活動を行う。

その後、また仕事の世界に復帰。
今度はミニ起業家として、それまでに身につけた二つの分野の専門技能を活用して働く。
そして、そのまま70歳代、80歳代まで仕事を続ける。

カリヨンツリー型のキャリアを実践すれば、自分のエネルギーや関心の変化に合わせて、
さまざまな働き方や職種の選択肢を柔軟に選びやすい。

次のような問いを考えることが可能になる。

●自分はどのように時間を使いたいのか?

●人生のそれぞれの段階で、どういう生活のリズムが自分に最も適しているのか?

●その時期の経済情勢の影響をどのように受けるのか?

●人生のそれぞれの段階で、どのように自分の課題を設定し、どのくらい責任のある仕事を担うのか?

働き方の未来を考えるとき、はっきり認識すべきなのは、
これまでのキャリアの常識が通用しなくなるということだ。

本書で論じてきた5つの要因により、仕事の世界が大きく様変わりすることを考えると、
私たちは働き方を<シフト>させなくてはならない。

これまでの固定観念を<シフト>させ
身につける能力を<シフト>させ
行動のパターンを<シフト>させる必要があるのだ。

 

<つづく>

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