転職エージェントとの面談で退職理由をどこまで言うべきか?
皆さん、こんにちは。
私は転職コンサルタントですので、日常的に求職者(転職希望者)とお会いします。
通常は勤務先オフィスへのご来社での面談ですが、
その方がお忙しいときは社外で面談します。
いわゆる出張面談です。
たとえば、都内にあるJRターミナル駅で待ち合わせて、
そのまま近くのカフェへ移動し、
名刺交換、自分の会社の説明、個人情報の取扱い説明、
さらに私自身の自己紹介。
ここまでが前段のイントロダクションの部分です。
その後、ご本人が持参されてきた、履歴書、職務経歴書をお預かりします。
それからが「カウンセリング」となります。
私の場合、先にスカウトメールで求人情報(非公開求人)をご案内しているケースが多く、
その求人に対して、ご本人から「興味あり」という返事をもらった時点で、お会いします。
直接お会いしてから、その場で、求職者から履歴書をお預かりします。
それと交換する形で、私から正式な会社名入りの求人票をお渡しします。
お互いの情報を交換するわけです。
特に順番は決まっていませんが、
私から求人企業の募集内容を説明することが多い感じです。
ただ、求職者はすでに求人をご覧になって、応募されているので、
スカウトメールでは記載の無かった、会社情報の紹介がメインとなります。
その時点で、非公開だった求人企業の、全体像が明らかになるわけです。
その後、カウンセリングの時間は、その方の経歴紹介をお聞きするというのが、
全体の構成です。
さて、ここからが本編です。
まず冒頭で、求職者と私がお会いする際の流れを、長々と書いたのには理由があります。
最初にお会いしてから、私の会社の紹介、私自身の自己紹介。
そして、求人企業の会社紹介。
すべて、私から情報を開示しています。
こちらはフラットな感じで「全てあなたに開示していますよ」という
姿勢を理解して頂く為に、時には冗談を交えながら、細かく説明します。(笑)
最初は初対面なので、若干、緊張される方もいらっしゃいます。特に若い方です。
その緊張をほぐす為に、まずは私から「あなたに心を開いています」という
姿勢を見せるわけです。
で、ひとしきり私が喋った後に
「これだけ一人で喋ったから、次はあなたの番ですよ」と言うと、
ほとんどの方から「はい、そうですね、分かりました」と言って貰えます。(笑)
このお会いした直後のアイスブレークの時間を、私は大事にします。
全く知らないもの同士が、転職という言葉だけで繋がった、最初の瞬間だからです。
若い20代の方とかであれば、その方のお父さん、お母さんと
私が1歳違いとか、けっこう普通にあります。(笑)
自分の息子や娘のような、年の差です。
そうなると、相手はやはり緊張されているので、
最初の時点で、それをほぐす感じです。
そこで最初にフランクな関係作りが出来るか、出来ないかが、
あとあと、重要になってきます。
で、本題に入ります。
私がエージェントとして、
絶対に確認しなければならないことの一つが「退職理由」です。
現在の職場を「転職する理由」、
どちらも「会社を辞める」という決断なので、意味は同じです。
実際には、職務経歴書にそって、時系列に過去から現在まで、
仕事内容を聞いた後、一呼吸置いてから聞きます。
「あなたはなぜ、会社を辞めようと考えているのですか?」
そこでの答えは、人それぞれ様々ですが、だいたい、以下のような感じです。
- 新しい会社、新しい環境で、もっと自分のやりたい仕事をしたい。
- 年収も上げたい。
- これまで経験したことのない業界、職種へチャレンジしたい
- 自分でやりたい仕事が見つかったから、その分野へキャリアチェンジしたい。
- 資格を取得して、その資格を活かした仕事をやっていきたい。
- 介護が必要な親の面倒を見るために、地元に帰りたい。
最後の5以外は、どれも、前向きで素敵な理由ですね。(笑)
ただし、注意しなければなりません。
この1-4の理由は、本当の理由ではなく、対外的にお化粧された、
オモテ向きの転職理由です。
私はこれらの理由を聞いた後に、すぐに追いかけ質問をします。
「あ、すいません。
いまあなたがおっしゃったのは、オモテの理由ですよね?
それはそれで結構ですが、
私があなたに教えて頂きたいのは、ウラの理由、本当の理由です」
私が笑いながらこう言うと、相手もつられて
「あ、そうですよね?綺麗すぎますよね?」と言われます。
本人もよそ行きの理由だと、ちゃんと分かっているからです。(笑)
さらに私はこう言います。
「退職理由には、通常、オモテとウラの2つがあるはずです。
あなたが最初に言われたのは、オモテの理由であり、綺麗な方です。(笑)
ただし、転職コンサルタントである私は、ウラの理由、
本当の理由を知っておかないといけません」
「それによって、あなたに対する転職支援のゴール地点が全く違ってくるからです」
「山田さん、同じ間違いを起こさない為にも、
オモテとウラの両方とも、私に言ってください」とお願いします。
そうすると、その方は「はい、本当の理由はパワハラです」と
ストレートに教えてくれます。(笑)
先に述べたような、ご両親の介護であれば、確かに納得できます。
しかし、みんながみんな、親の介護というわけではありません。
誰でも、今の会社を辞めるということは、それなりに事情があるのです。
今の職場から「逃げた」と誤解されたくない、という気持ちもよく分かります。
というか、人間だから、生きていれば、色々あります。
オモテの退職理由=タテマエ
だいたい、以下に述べるような、綺麗な理由が多いです。
「いまの職場環境や待遇に不満はありませんが、平日は仕事の終わりが遅く、
土日もどちらか仕事が入ったりするため、自分の勉強する時間が、なかなか取れません。私としては環境を変えることで自分のキャリアアップを図りたいと思い、転職したいと考えました」
ウラの退職理由=ホンネ
以下が、本当の理由、ウラの退職理由の例です。
「去年、会社を継いだ二代目のボンボン社長は、何も知らないくせに、現場に口を出したがります。その下にいるイエスマン部長は、バカ社長にゴマをすりながら、とにかく部下に厳しいです。
パワハラが日常的にある職場で、くしの歯が抜けるように、人がいなくなっている状況です。社内は殺伐としていて、疑心暗鬼になって、周りはスパイだらけ。
毎月、誰かが退職するので、残った人間の業務量は増える一方です。平日は帰宅が遅く、土日も携帯に電話がかかってきて、仕事から離れられない。
残業代は出るものの、毎月の固定額なので、時給に換算すると、子供の小遣い程度しかなりません、だから、一日も早く、辞めたいんです」
・・・実際は、こんな感じですよね。(笑)
これはもちろん、私が想像で書きましたが、これに近い職場は、本当にあったりします。
結構、てんこ盛りにしたので、いくつかの事例は、
あなたの職場でも見られる光景かもしれません。
退職の3大理由とは、「ヒト、モノ、カネ」
さて、本題に戻ります。
人が退職する理由は、大きく三つに集約されると考えられます。
ズバリ、「ヒト・モノ・カネ」です。
皮肉なことに、これは「経営の3要素」と同じです。
退職理由が「ヒト」の場合
- 男性の場合は、自分の上司とのタテの関係が、うまくいかないケースが多いです。
- 女性の場合は、職場の人間関係、同僚とのヨコの関係だったりします。
- あと、女性は、派閥があったりして、そこでつまはじきにされると、いられなくなります。
- あと、よくあるのが、職場内に、尊敬できる人物が一人もいない。
- さらに、職場のモラルが低く、いつも他人の噂や悪口ばかり聞こえてくる。
- また、やたらと社員参加の行事が多く、アットホームな職場アピールを強要される。
- もっと言うなら、「上司のロボット」になることを強要される。
- 社長のワントップの会社なので、何かミスして逆鱗に触れたら、いられなくなる。
- 「失敗したら部下のせい、成功したら上司の手柄」という考え方が、会社全体に浸透している。・・・他にも沢山ありますが、以上が、ヒト関連です。
退職理由が「モノ」の場合
これはやや、こじつけになりますが、「モノ」=「モノごと」=「しごと」だと変換して下さい。
- 仕事内容が合わない、つまらない。
- 入社して以来、同じ部署にいるため、成長の機会がない。
- とにかく業務量が多すぎるので、残業しても仕事が終わらない。
- 仕事をする上での裁量権がまったくなく、個性が活かせない。
- 同じ仕事を何年もやってきて、さほど苦もなく、惰性でやっている状態。
- 自分じゃなくても、他の人がやっても、さほど差がない。
- 何でも屋のように便利に使われていて、スキルに専門性がない。
- いずれ機械やロボットに置き換わり、仕事が無くなる可能性がある。
退職理由が「カネ」の場合
- 基本的に、給料が安い。
- 業界全体の給与水準が低いので、結婚して家族を養うのは難しい。
- 残業しても、タイムカードは「定時退社」と記入させられて、支払われない。
- サービス残業が当たり前の職場であり、残業代の話を持ち出すと、上司に目を付けられる。
- 入社以来、昇給がない。
- そもそも、退職金制度がない。
- 賞与をもらったことがない。
- 年俸なので、残業代という概念がない。
- 人事評価の基準が曖昧で、ゴマすり上手な人間は給料が高い。
- 年功序列で居座っている年配者は給料が高く、若手は安い、上がらない。
他にも沢山ありますが、このあたりでやめておきます。
さて、私が求職者と面談して伺うのは、その方のホンネの部分です。
今の会社にいて、不満を感じる部分とは、ヒトか、モノか、カネか、
それとも別な理由なのか、まずはそこを把握します。
その方に、次の会社選びをする上での優先順位を、ホンネベースで教えて貰います。
次の職場(転職先)では、現状の不満を解消できそうか?を一緒に考えます。
例えば、子供が生まれたばかりの男性は、
最近は特に、育児に対して積極的に取り組まれます。
奥さんだけの子育ては負担が大きいので、
比較的、退社時間の早い会社を希望されるわけです。
いわゆる「イクメン」ですね。
となると、その方にとっては、
夜遅くまでバリバリ働かねばならない職場は、やや対象外です。
なるべく、土日も家族のために時間を取りたい。
できれば、転勤がない会社。
だから、キャリア志向ではなく、長く働ける職場を探したいというケースもあります。
そんな希望をもたれている方に、上場直前のベンチャー企業をご紹介したりはしません。
上場前は、どの会社も忙しく、まさに体力が勝負であり、夜も終電が当たり前、
土日のプライベート時間もないと分かっているからです。
人によって、仕事に求めるものが違う
何が良く、何が悪い。
何が正しく、何が間違っている、というわけではありません。
その人によって、仕事に求めるものが違うので、それをきっちり把握しておくことが
転職コンサルタントである私の役目だと思います。
もし、私の経験が浅く、転職希望者の「オモテ」の理由しか
把握していなかったら、危険です。
表面上の綺麗な理由だけで企業を探し、その方とマッチングがうまくいったとします。
そのままその方が転職されて、次の職場でも
同じ理由で悩まれたら、本当に何の意味もありません。
転職しない方が良く、単に履歴書を汚しただけになってしまいます。
あなたが初対面の転職エージェントに、
自分の本当の転職理由、退職理由を言うのは、確かに抵抗があるかもしれません。
でも、それを伝えなければ、
あなたの転職活動がすべて無駄になってしまう危険性があります。
コンサルタントをいかに自分の味方につけるか?
それが転職活動のキモの部分になるのかもしれません。
本日も最後まで読んで頂き、有難うございました。