【 運営者から皆さんへ 】
2025年の未来社会を予測した名著「ワークシフト」を紙しばい形式でまとめました。
なるべくPC経由でアクセスして頂き、デスクトップ等にPDF資料をダウンロード、
それをサクサクと読み進めていけば、未来が見えるはずです。
(スマートフォンだと、画面小さすぎて難しいかもしれません)あなたが、今からどんな準備をするべきか、それも分かるはずです。
「あと5年ある」か、「たった5年しかない」か
・・・どう感じるかは、あなた次第です。
by まるきん
第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実
【 第3章 孤独にさいなまれる未来 】
2025年の世界では、ほかの人と直接対面して接する機会が減る。
バーチャルな人間関係が直接の触れ合いと同じくらい、
私たちに元気を与えるようになる可能性があるが、そうはならないだろうと私は思う。
ほかの人と触れ合う機会が減れば、
気軽な人間関係がもたらす喜びを味わえなくなる。
充実した人間関係が仕事を充実させ、
充実した仕事が人生を充実させるという好循環も生まれなくなる。
同僚との気軽な関係の消滅~
私たち人間は、ほかの人たちとの関係に強く影響を受ける。
仕事に関して多くの人が最も重んじる要素は、同僚との関係だ。
世論調査会社が「どうして、いまの勤め先を辞めないのか」という質問項目に対して
用意する回答の選択肢の一つは「職場に友達がいるから」というものだ。
ハーバード大学の医学大学院研究チームは、
何千人もの人たちを対象に、健康と幸福に関する長期の追跡調査を実施した。
それによると、最も幸福感が高いのは、最も裕福な人たちでもなければ、
最も大きな業績を成し遂げた人たちでもなかった。
幸福感の高さと最も強い関連性が認められた要素は、
親しい友達がどの程度いるのかという点だった。
逆に、寂しさを感じている人は概して健康状態が悪く、
しかも孤独の弊害は急速に周囲の人たちに伝染することがわかった。
テクノロジーが進化すれば、バーチャルなアバターとの関係が
現実の血の通った関係と同様の、
喜びや心地よさをもたらす時代がやってくるのかもしれない。
あるいは、一部の人が予測するように、脳を手術することにより、
どんなときも前向きの感情をいだけるようになるのかもしれない。
しかし、そのような時代が出現する保証はない。
むしろ、仕事の場で生身の人間と接する機会が減り続け、
私たちは深い孤独と寂しさを味わうようになるかもしれない。
2025年の世界では、画像処理技術、ホログラム技術、
バーチャル技術の進化とクラウドの発展を追い風に、
自宅に最先端のテクノロジー環境が整備される。
その結果、仕事で必要な情報を得るためだけに出社する必要がなくなる。
自宅のコンピュータや携帯端末ですべての情報が手に入るのだ。
顧客はもとより、仕事仲間も世界中に散らばっている。
一緒にプロジェクトに取り組む同僚がオフィスで隣に座っているとは限らない。
同僚が同じ都市や同じ国にいないケースも珍しくなくなる。
家族との関わりの希薄化
私たちが築く人間関係の中で、
仕事上の人間関係が重要な部分を占めていることは間違いないが、
それはあくまでも一部にすぎない。
仕事の世界で温かみのある人間関係が欠けていても、
多くの人は、家族との温かい関係によって埋め合わせている。
職業生活と家庭生活は、互いに影響を及ぼしあう場合がある。
というより、仕事と仕事以外の生活を完全に切り離し、
両者がまったく混ざり合わないようにすることは、まず不可能だ。
現実には、一方における心理状態がもう一方に影響したり、
両者の人的ネットワークや技術・能力が重なり合ったりするケースが多い。
家庭でリラックスし、自分らしく振る舞い、愛情を注がれて過ごせれば、
仕事のストレスや負担に対処する基盤を築ける。
逆に、仕事でうれしいことがあれば、1日の仕事を終えたとき、
明るく前向きな気持ちで家庭に戻れる。
しかし、波及効果が悪いほうに作用する場合もある。
仕事の世界で怒りをいだいたり、
正当に評価されていないと不満を感じたり、
緊張を強いられたりすれば、悪い感情が家庭に持ち込まれて、
家庭で幸せを味わう妨げになりかねない。
家庭で不安を感じたり、罪悪感にさいなまれたり、
家庭の要求に押しつぶされていたりすれば、
そういう感情は仕事にも持ち込まれやすい。
近年は、人間関係の築き方の面でも、
職業生活と家庭生活が相互に影響を及ぼしあうようになった。
20世紀末以降、家庭内の人間関係で、
「交渉」により問題が解決されるケースが増えてきた。
女性の経済的独立が強まったこと、そして、
男女の役割に関する認識が大きく変わったことがその根底にある。
こういう時代には、家庭で人間関係を
うまく運ぶ力を身につければ、その力は仕事でも生きる。
家庭で家族と交渉する技術が高い人間は、
同僚や上司、取引先との交渉が上手に出来る可能性が高いし、
ものごとを交渉することをいやがらない。
家族と家庭はどう変わってきたか?
家庭生活がどれだけ大きく変化したかを知るためには、
自分の両親と祖父母がどういう人生を送ったかを考えればいい。
- あなたの両親と祖父母には、子供が何人いるか?
- 両親や祖父母は、自分自身や親の離婚を経験しているか?
- いまあなたの家族構成はどうなっているか?
あなたの一家はもっと安定していて、
離婚経験者がほとんどいないかもしれない。
しかし、もしそうだとしても、未来にはそういう一家がもっと減る。
世界の多くの国で、離婚は特別なことではなくなった。
いまだに離婚に対する風当たりが強いインドでも、
夫婦が生涯を通じて一緒に暮らし続けるとは限らなくなっている。
都市化の進行-グローバル化の要因
未来には、世界中で都市が爆発的に拡大する。
世界の総人口に占める都市生活者の割合は、
1800年には3%、一世紀後の1900年でも14%に過ぎなかった。
しかし、ベビーブーム世代が生まれた1950年頃には、
その割合が30%にはね上がっていた。
この世代の生涯の間に、都市住民の割合はさらに50%まで上昇した。
2010年、多くの先進国では、人口の75%以上が都市で生活している。
今後、このペースが減速すると判断すべき材料はない。
こうした状況が一変したのは、1870年頃だ。
西洋で、交通・輸送、エネルギー、製造の分野で
目覚しいイノベーションが相次いで実現し、
工業が飛躍的に発展した。
それに伴い、都市に大量の人口が流れ込んだ。
その一世紀あまり後の2008年、世界の人口に占める
都市生活者の割合がついに非都市生活者を上回った。
世界の人口の過半数が都市で暮らす時代が訪れたのだ。
2010年の中国では、都市人口と農村人口の比率が46%:54%だが、
GDPへの寄与度は都市生活者のほうが格段に大きい。
世界の都市人口は、2030年に50億人に迫ると予想されている。
都市化が進行する結果、故郷を離れ、知人が少なく、
地域のコミュニティの一体感が乏しい都会で生活する人がますます増える。
それが人々の孤独を生み出す大きな要因になる。
移住の増加-人口構成の要因
2025年の世界では、高いレベルの教育を受けたり、
もっといい仕事に就いたり、
戦乱や自然災害から逃れたりするために移住する人が増える。
将来はおそらくきわめて高度な才能や
専門技能の持ち主が出身地を離れて、
世界のいくつかの人材集積地に移り住むケースが増えるだろう。
国際経験を積むために、途上国で短期間働くことを選ぶ人もいるかもしれない。
正真正銘のグローバル市民になり、雇用やビジネスの機会を求めて
いつでもどこへでも移住を繰り返す人も現れるだろう。
将来、グローバル化が進めば、いつでも自動車や飛行機に乗って
遠くの友達や家族に会いにいけるようになり、
孤独が和らぐのではないかと考える人もいるかもしれない。
しかし、現時点の予測によれば、
今後ますますエネルギーが入手しづらくなり、
エネルギー価格が大幅に上昇する可能性が高い。
気軽に旅行などできない時代がやって来かねない。
世界で消費されているエネルギーの量は、産業革命以降増え続けている。
一人当たりのエネルギー消費量が劇的に増えているだけでなく、
世界の人口も急速に増加している。
この二つの要因により、世界で消費される
エネルギーの量は爆発的に増加し続けてきた。
そのペースが減速する気配はまったくない。
エネルギー価格を押し上げる要因としてもう一つ見落とせないのは、
中国やインドなどの途上国が経済発展のプロセスで
最もエネルギー消費量の多い段階に達することだ
しかも、中国とインドは莫大な人口を抱えている。
化石燃料をとくに大量に消費するのが交通・輸送手段だ。
今後は、新興国の交通・輸送機関用燃料の需要が大幅に増加する見込みだ。
こうした状況を受けて、エネルギー消費量を
減らす必要性がこれまで以上に強調されるようになる。
その有力な方法として、オフィスに出勤せずにインターネットを使って
在宅で仕事をするバーチャル勤務が普及するだろう。
2010年の時点で、アメリカとイギリスの家庭の
インターネット接続率は75%を突破している。
理屈の上では、これらの家庭の人々はすでにバーチャル勤務が可能な環境にあるのだ。
家族のあり方の変化-社会の変化の要因
家族のあり方は、世界全体で大きく様変わりした。
概して、昔に比べて家族の規模が小さくなった。
その点は、大家族が当たり前だった地域も例外ではない。
たとえばバングラデシュの出生率は、1960年に6.8人だったのに対し、
2010年には2.7人まで下落している。
しかも、家族がパパとママと数人の子供たちで構成されるとは限らなくなった。
離婚と再婚が珍しくなくなり、家族の構成が昔より複雑になっている。
核家族が増え、しかも別居と離婚が珍しくなくなるにつれて、
家族の構成の組み換えが進み、
従来と異なるさまざまな親族関係のパターンが出現している・・・・。
以前は、家族同士であれば当然のごとく、
互いの間に信頼が形づくられていたが、
いまや信頼は交渉と取引を通じてはじめて獲得できるものになった。
人々は家族とどう接するべきかを見出さなくてはならなくなった。
それに伴い、日々の生活の指針となる新たな倫理基準を作り上げる必要が出てきた。
大企業や政府に対する不信感-社会の変化の要因
2025年の世界で人々の孤独を深める要因の一つは、不信感の高まりだ。
私たちは概して、ほかの人たちやコミュニティを信頼していれば、
他人と関わり合おうとするが、信頼していなければ、
あまり他人と関わり合おうとしない。
ここでいう「信頼」とは、単にほかの人や組織が好きかどうかということではない。
もっと行動志向の感情で、たいていは未来に対する期待に基礎を置いている。
私たちがほかの人や組織やブランドを信頼するのは、
その対象が将来に約束を守ってくれると思うからだ。
そのような状況を生み出している一因は、
企業と社員の昔ながらの「親子」的な関係が崩れたことにある。
かつては会社が親さながらに社員の「面倒を見る」ことが期待されていたが、
1980年代と90年代にレイオフ(解雇)が盛んに行われて、
そういう関係に終止符が打たれた。
こうして世界中の働き手たちは、
自分のキャリアの針路を決めるのは自分しかいない、
自分しか当てに出来ないと気づき始めた。
幸福感の減退-社会の変化の要因
不幸せに感じているとき、私たちは孤独に陥りやすい。
信頼と同様、幸福はあいまいで多義的な言葉だ。
信頼が他者との関係と他者への期待に関るものだとすれば、
幸福は自分自身との関係に関わるものと言えるだろう。
信頼が他人との日々の関係を円滑にする上で欠かせない要素であるように、
幸福は自分自身の日々の行動を円滑にする上で欠かせない。
しかし、豊かな先進国では概して、人々の幸福感が減退している。
多くの先進国ではうつ症状に悩まされる人が増えている。
1970~90年に、思春期の自殺者が倍増した国も少なくない。
興味深いのは、幸福と経済発展の関係が単純な比例関係にないことだ。
国民一人当たりのGDPが上昇すれば、その国の国民の幸福感もおおむね高まる。
しかし、GDPがある程度の水準に達すると、それ以降は収穫逓減の法則が作用し、
所得が増えてもそれまでほど幸福感が高まらなくなる。
多くの国で貧困が不幸の原因となっていることは事実だが、
先進国では豊かだからといって幸せだとは限らないのである。
豊かになると、豊かであることを当たり前と感じるようになり、
いくら所得が増えても満足感を味わえなくなるのだ。
<つづく>